「一人親方」と呼ばれる個人事業主の職人さんが、建設作業中にアスベストを吸い込み健康被害を受けたとして国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟の判決が2018年8月31日に大阪高裁でありました。
判決内容は、2016年1月に京都地裁で判決されていた国と建材メーカーの責任を改めて認め、約3億円の支払いを命じる判決を命じました。
判決では、国が原告27人に約1億8800万円、建材メーカー10社が原告24人に約1億1300万円を支払うよう命じており、1審より約8500万円が増額されました。
「一人親方」の健康被害の救済を…
「一人親方」は、現場ではケガと弁当は自分持ちと言われるぐらい、自己責任を追求されている現状があります。
労働関係法令上でも「一人親方」は労働者に当たらないとして救済の対象ではなかったが、今回、判決内容では「労働安全衛生法冷の規定には一人親方の安全を図る趣旨もあると理解される」と判断されました。
無視されてきたアスベスト健康被害
1964年の時点で空気中の大量のアスベストが人体に有害であることを指摘した論文はすでに公開されていた。
1973年には、世界最大のアスベストメーカーであったアメリカのジョンズ・マンビル社で製造者責任が認定される。
このような動きを受け、世界的にアスベストの使用が削減・禁止されるようになる。
しかし、日本では…
1975年9月に「吹き付けアスベスト」の使用が禁止されたのみ。
2004年に石綿を1%以上含む製品の出荷が原則禁止
2006年9月の労働安全衛生法の改正により全面製造禁止なる。
全面禁止になるまでに、アスベストの危険性が証明されていたのにも関わらず、全面製造禁止になるまでに長い時間を有する事となったのは、アスベスト(石綿)は耐熱性、絶縁性、保温性に優れており、安価なので建築資材や工業材料をはじめ自動車や電化製品、日用品などに様々な物に利用され、国内使用量の約8割は建築材料として、とくに建設ラッシュの時代にはビルを建築する際、吹き付け材料に盛んに使われました。
ご存知ですかアスベスト建材の多さを…
アスベストは吹き付け材としてのみ使用されていたわけではありません。
様々な場所に使用されており、耐久性に優れているとのことから天井や屋根材としても使わており、耐熱性に優れているところから風呂や台所にも使われおります。
石膏ボード・壁紙・塗料にも含まれており、目に見えないところだけでなく、目に触れる場所にも存在しています。
2040年頃にピークを迎える
環境省では、建築物の解体によるアスベストの排出量が2020年から2040年頃にピークを迎えると予測しており、年間100万トン前後のアスベストが排出されると見込まれ、その対応を懸念する声が上がっております。
アスベストは築年数が長い建築物では、マンション・ビル・戸建て住宅でも必ず使用されております。
リフォーム・解体をする際は十分ご注意下さい。
独立行政法人 環境再生保全機構HP
アスベスト(石綿)健康被害の救済ページ
https://www.erca.go.jp/asbestos/what/