2024年4月17日、子どもの貧困対策や住居を強化する生活困窮者自立支援法などの改正法が、参院本会議で可決・成立
最大30万円の準備金を支給
準備金は高校や中学を卒業し、就職のため生活保護受給世帯から経済的に自立する子どもへ、転居する場合は30万円、転居しない場合は10万円が支給され、職業訓練を経て就職する場合でも受け取ることができる。
困窮者向けの家賃補助「住居確保給付金」
より家賃が安い物件への転居費用としても活用できるようにし、困窮世帯の自立を促進
※「住居確保給付金」とは、休業等に伴う収入の減少により、住居を失うおそれが生じている方々について、原則3ヶ月、最大9ヶ月、家賃相当額を自治体から家主さんに支給される。
「貧困ビジネス」対策
無料・低額宿泊所を自治体に無届けで運営する事業者に罰金を設け、市町村が無届けの疑いがある事業者を発見した場合、都道府県への通知を努力義務とする。
生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案の概要
単身高齢者世帯の増加等を踏まえ、住宅確保が困難な者への安定的な居住の確保の支援や、生活保護世帯の子どもへの支援の充実等を通じて、生活困窮者等の自立の更なる促進を図るため、以下の措置を講ずる。
- 居住支援の強化のための措置
- 子どもの貧困への対応のための措置
- 支援関係機関の連携強化等の措置
改正の概要
1.居住支援の強化のための措置【生活困窮者自立支援法、 生活保護法、 社会福祉法】
- 住宅確保が困難な者への自治体による居住に関する相談支援等を明確化し、入居時から入居中、そして退居時までの一貫した居住支援を強化する。(生活困窮者自立相談支援事業、重層的支援体制整備事業)
- 見守り等の支援の実施を自治体の努力義務とするなど、地域居住支援事業等の強化を図り、地域での安定した生活を支援する。
- 家賃が低廉な住宅等への転居により安定した生活環境が実現するよう、生活困窮者住居確保給付金の支給対象者の範囲を拡大する。
- 無料低額宿泊所に係る事前届出の実効性を確保する方策として、無届の疑いがある施設に係る市町村から都道府県への通知の努力義務の規定を設けるとともに、届出義務違反への罰則を設ける。
2.子どもの貧困への対応のための措置【生活保護法】
- 生活保護世帯の子ども及び保護者に対し、訪問等により学習・生活環境の改善、奨学金の活用等に関する情報提供や助言を行うための事業を法定化し、生活保護世帯の子どもの将来的な自立に向け、早期から支援につながる仕組みを整備する。
- 生活保護世帯の子どもが高等学校等を卒業後、就職して自立する場合に、新生活の立ち上げ費用に充てるための一時金を支給することとし、生活基盤の確立に向けた自立支援を図る。
3.支援関係機関の連携強化等の措置【生活困窮者自立支援法、生活保護法】
- 就労準備支援、家計改善支援の全国的な実施を強化する観点から、生活困窮者への家計改善支援事業についての国庫補助率の引上げ、生活保護受給者向け事業の法定化等を行う。
- 生活困窮者に就労準備支援・家計改善支援・居住支援を行う事業について、新たに生活保護受給者も利用できる仕組みを創設し、両制度の連携を強化する。
- 多様で複雑な課題を有するケースへの対応力強化のため、関係機関間で情報交換や支援体制の検討を行う会議体の設置(※)を図る。
※ 生活困窮者向けの支援会議の設置の努力義務化や、生活保護受給者の支援に関する会議体の設置規定の創設など - 医療扶助や健康管理支援事業について、都道府県が広域的観点からデータ分析等を行い、市町村への情報提供を行う仕組み(努力義務)を創設し、医療扶助の適正化や健康管理支援事業の効果的な実施等を促進する。
生活困窮者自立支援法に基づき、全国の自治体に生活全般にわたるお困りごとの相談窓口が設置されています。
この相談窓口を「自立相談支援機関」といい、ここに相談したい場合は、お住まいの自治体の自立相談支援機関で相談を受け付けております。
困窮者支援情報共有サイト~みんなつながるネットワーク~公式HP
※厚生労働省の委託事業として「一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク」が受託して開設したサイトです。
https://minna-tunagaru.jp/
「貧困ビジネス」が急増中 その手口・方法とは?
物価高、インフレ、景気後退は、貧しい人々の生活に大きな影響を与えております。
貧困ビジネス拡大の背景
日本で「ホームレス問題」が社会問題となったのは1990年代以降ですが、ホームレス自体は常に存在しており、高度成長期には、日雇労働者が簡易宿泊所(いわゆる「ドヤ」)に寝泊まりする「寄せ場」が東京の山谷や大阪の釜ヶ崎に形成されています。
1990年代には寄せ場における日雇労働市場が解体し、失業が顕在化したことでホームレスが寄せ場を超えて拡大し、2000年代には非正規雇用などのワーキングプアの増加により、貧困や不安定居住が普遍化する「社会の総寄せ場化」が起きました。
さらに、2008年に起きたリーマンショックで、当時、200万人ほどいたと言われる製造業派遣労働者の半数は、故郷を離れて単身で工場に赴任し、会社の借り上げ寮に住み、その多くが一斉に解雇される「派遣切り」により、仕事と住居を同時に失う事が発生。
こうした問題が顕在化する中で、受け皿となったのが「無料低額宿泊所」で、無料低額宿泊所の源流は戦前の篤志家による慈善事業とされているが、1999年から施設数が増加、1998年には43施設だったのが、最新の2020年には608施設へと激増していった。
無料低額宿泊所にはもともと法定の最低基準が設けられておらず、徴収する費用に対する規制もなかったため、設備やサービスなどのコストを抑え、受給者から保護費を多く徴収すれば、利益が生み出される構造があり、例えば、部屋は個室でなかったり、個室と称していてもワンルームの部屋をベニヤ板で仕切っているだけだったり(1人あたり3畳程度)、南京虫が湧いていたり、食事は古い米が多く、揚げ物ばかりだったり、毎日同じものばかりだったりと劣悪な環境にも関わらず、保護費のほとんどを徴収され、手元に1、2万円程度しか残らないと言います。
そのため、低コスト・安定収入のホームレスを相手にした貧困ビジネスは拡大していきました。
このような劣悪な施設に対する批判もあり、国は無料低額宿泊所の最低基準を法制化した(2020年4月施行)。居室の個室化を義務付け、床面積は7.43平方メートル(約4畳)以上を原則とし、「地域の事情によりこれにより難い場合」には、4.95平方メートル(約2.7畳)でもよいとしている。
「貧困ビジネス」の実態
2020年に行われた厚労省の調査によると、無料低額宿泊所は全国608施設、入所者は16397人で、入所者数の約77%は首都圏の一都三県に集中しており、年齢層は65歳以上が約46%と約半分を占める。
入所期間は3年以上が37.4%で最多、1年以上〜3年未満が24.4%と次に多く、1年以上の長期入所が約6割を占めている。
新手の「貧困ビジネス」
さらに最近では、新手の「貧困ビジネス」とも言えるケースが出てきている。
ホームレスの人たちに郊外の辺鄙な場所にあるアパートをあてがう代わりに、身分証を取り上げ、アパートも給湯器が壊れているなど劣悪な物件で、入居者が集まったところで満室物件として高値で転売し、利益を得る。
入居者が多い物件は高値で売れるため、生活保護者を劣悪な物件に囲い込むことがビジネス化している。
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